数列の和、漸化式、数学的帰納法・・・と数列の分野には様々な難所が待ち構えていますが覚えてもらいたいコツはそういくつもあるわけではありません。
- 数列で躓くポイント
- 数列の教え方 - 等差数列、等比数列の一般項
- 数列の教え方 - 等差数列、等比数列の和
- 数列の教え方 - シグマ記号
- 数列の教え方 - 漸化式
- 数列の教え方 - 確率漸化式
- 数列の教え方 - 数学的帰納法
数列で躓くポイント
案外、数列の分野でよく間違えられるポイントというのは少ないです。
数少ないポイントのなかの1つ目は等比数列の和です。等比数列の和はこのような形をしていますが、これを生徒が丸暗記してしまっていないか注意です。
もう一つは数学的帰納法の証明方法です。一番オーソドックスな、「n=1示し、n=k仮定し、n=k+1を示す」の3ステップ目「n=k+1示す」で迷子になってしまうというのがよくある間違いです。
数列の教え方 - 等差数列、等比数列の一般項
等差数列の一般項の求め方は、a+(n-1)dの公式に代入して連立方程式を解くのが高校生のよく使う手法ですが、授業で教えるときにはもう少し「等差数列感」を味わった解法を教えます。チャート例題は数学Bの例題85の(2)。
まず、「59項が70、66項が84」の条件から公差dだけを求めます。等差数列なのだから、「59〜66項には公差7個分あるよね?」という話です。
そこから、一般項を考えます。第59項をベースにした考え方です。
この方法を教えても普段は等差数列の公式に頼った解き方に戻ってしまうケースがとても多いのですが、それでも59項をベースにしようが初項をベースにしようが同じ等差数列の一般校は表現できるということを教えたいです。
等比数列の一般項は例題94の(2)です。
まずは、「10項が32、15項が1024」という条件から公比を求めます。
その後、第10項をベースにした一般項を導きます。
このノートのx=n-10部分は、鋭い生徒だと感覚的に分かります。すごいと思います。
この一般項の導き方も教えたところで生徒は公式頼りの解法に戻ってしまう可能性が高いのですが、等比数列の感覚を味わうためにも教えています。
数列の教え方 - 等差数列、等比数列の和
等差数列の和は、2パターン紹介されている教科書や参考書が多いですが私は1つしか教えません。項数×(初項+末項)÷2です。
公式の導出は、「小学生のときに、1+2+3+4+5+6+7+8+9の和をうまいやり方で求められないか考えたでしょ?」と生徒に聞きながら教えますが、あんまり同意を得られたことがありません。
これは公式の作り方から理解して覚えてほしいです。というか、作り方さえ理解していれば覚えるというほどのものでもありません。
例題89では、すべてこの項数×(初項+末項)÷2の形に収束させます。
(1)は初項1、末項97が分かっているので、あとは項数を調べます。
(2)は初校200、項数が分かっているので、あとは末項を調べます。
(3)は項数が分かっているので、あとは20項と50項を調べます。(3)で(1〜50の和)- (1〜19の和)で求めるのは等差数列の性質を味わえてない上に計算ミスすることが多いのでおすすめしません。
次は、等比数列の和です。公式の導出を紹介します。
これは公式の導出を理解して覚えることが超大事です。この公式の考え方を使う入試問題がとても多いからです。私は公式の導出を理解することがいかに大切か、高校時代に通った個人塾でおそわりましたが、本当に感謝しています。
公式の導出においては、両辺を(1-r)で割るときに、r=1とr≠1で場合分けする必要があることに気づけるのもいいです。
等比数列の和の演習は例題96です。
この(1)は、公式導出をそのまま真似て解くよう教えます。
導出を真似ると、両辺を割り算するときにa=1/3とa≠1/3で場合分けが必要だと気づけます。これを真似なかったら、高校生100人中90人はa=1/3のケースを忘れます。
(2)も公式をそのまま使うことはありません。この問題はそもそも公式すら使いません。等比数列感のある解き方をします。
するとこのように、3次方程式の問題に帰着します。
次の例題97でも、公式は使いません。「全部書き出せ!」と教えて行きます。
この解き方だと、等比数列の和の感触を味わえます。
このやり方なら、小学生でも解けてしまいます。
和の公式を使うと、公比r=1, r≠1で場合分けしないといけないのが難点です。
余談ですが一見難しそうな例題92の既約分数の和の問題は、この公式を丁寧に使うだけで解けてしまいます。
(実際の授業では、m=2, n=5, p=3のケースでどうなるか試させます)
数列の教え方 - シグマ記号
シグマ記号は公式だと思っている生徒がいますが、シグマ記号は単に表記を簡単にしたものだと伝えます。
最初の例題は102です。102の(3)が、教える側の腕の見せ所ではないかと思います。
展開して、ΣkとΣ定数、の公式を使うのはナンセンスです。
もちろん、このように等差数列の和の公式を用います。
「Σの一次式は等差数列の和」です。
もう一つ、シグマの中身が等比数列の和のケースについては、以前塾のブログでまとめてあります。
部分分数分解(BBBB)を用いる問題(例題108)があります。
この問題では、和を「縦に並べること」が大切です。
これが有効なのは、次の例題109の(2)のように、2つ飛ばしパターンのときです。
どれが消えて、どれが残るのか、縦に並べると迷うことがありません。
数列の教え方 - 漸化式
漸化式の問題は、ある程度変形がパターン化されていますが、それらを整理しやすくするためにも「人間が解ける漸化式は3種類だけ!等差!等比!階差!」というのを強調します。全ての漸化式の問題は、このどれかに近づけることを考えさせます。
2項間漸化式の特性方程式はどのタイミングで意味を覚えさせるか悩みどころです。「等比数列の形を作るために、このようなαを求める」くらいに説明を留めます。
なんとなく理解してもらったあとは、特性方程式を公式的に使ってもいいと思います。上の例題では、bnと置き換えて解かせますが、
最初はこのように置き換えないと①から一般項を解かせるのは難しいです。しかし、この後に続く漸化式の難しい問題を解くためには、こんなところでいちいち置き換えを利用していては時間ばっかりかかってしまうので、例題116は類題を10〜20問くらい解かせて「2分以内に解けるように」とトレーニングします。このトレーニングは大事です。
例題123は隣接3項間の漸化式です。この問題は、特性方程式を覚えてはいけないと思います。
ゴールの等比数列の形、すなわち↓の①'に変形できるためのα、βを解と係数の関係(KKK)の逆から求めるやりかたを教えます。
大学入試の数列の問題には、このようにゴールとなる等比数列の形を満たすα、βを大問の(1)で求めさせる問題があり、特性方程式に頼っているとそのような誘導の意味が分からず解けなくなってしまうからです。
数列の教え方 - 確率漸化式
難関大学で定番中の定番である確率漸化式の問題は、チャート例題では132、133、134の3題しかありません。
確率漸化式の問題を最初学ぶと「n回目とn+1回目のみ着目して漸化式をたてる」ことがなかなか腑に落ちない場合があり、教える側には目をつぶりながらでも解けるわ!と思える例題132でさえ、かなり難しく感じられるケースがあります。
私は、高2で初めて確率漸化式を学ぶときにはチャート例題では132だけ理解できれば十分だと考えています。
というのも、確率漸化式は「漸化式単品」のときとくらべて問題のパターン化が難しい上に、パターン化してもまだ難しいし、そもそもパターン化しきれないくらい数多くの状況が考えられることから、高3になってもっと論理的思考力がついてきた段階でまとめて理解すればよいからです。
名大など確率漸化式がほぼ毎年出るような大学を志望する生徒には、
この「合格る確率」を紹介しています。この参考書は確率漸化式の問題の解説がものすごく分かりやすく、問題数も十分あります。
数列の教え方 - 数学的帰納法
数学的機能法は、導入でこのような説明を考えてみましたが、スベってますでしょうか。
さて、数学的機能法で生徒が最もミスるのは、「n=k仮定したあとの、n=k+1の証明」です。
最初の例題135で見てみましょう。私はこのn=k+1の証明は「証明したいことを宣言しちゃおう」と教えています。
このノートを見て下さい。最初に、示したいものを①''で宣言しています。こうすることで、高校生によくある「n=k+1の証明やっているうちに迷子になった」ケースを防げます。
宣言してしまえば、あとは「等式の証明」とか「不等式の証明」ということになり、方針がシンプルになります。
迷子を量産するのは特に例題138です。
この問題では、条件として与えられた漸化式を用いてn=k+1のケースを証明するのですが、そのことを思い出させるために、
このように、「宣言した一行前まで全ての情報を使っていい」と伝えます。