キムチャート 塾で高校生に数学を教える方法

愛知県で大学受験の塾を経営しています。青チャートを用いて、数学重傷患者を蘇生するときに私が考えていることを公開します。

ベクトルの教え方

ベクトルでは、平面ベクトルで要点を押さえてしまって、空間ベクトルで「平面ベクトルと同じこと」と教えられるようにと考えています。

 

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1.ベクトルで躓くポイント

方針がなく計算していたら、今自分が何をやっているのか全く分からない迷子になってしまうというのがベクトルでよくある光景です。ベクトルの問題を処理するのに必要な方針はとても少ないので、その方針をたたき込めるかが、ベクトルを教えるときのポイントだと考えています。チャート例題でいうと数学Bの例題22を解かせることで「平面ベクトルの基準は2つのベクトル」を理解しているかどうかがわかります。例題24は一次独立の性質を理解しているかどうかがわかりますが、この性質を独学で理解できている生徒はなかなかいません。例題24がどの程度解けるかによって、その生徒がどのくらいベクトルの勉強をしてきたかもわかります。

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2.ベクトルの教え方 – 基準になるベクトルを押さえる

ベクトルの和、差、内積、3点が一直線上、並行なベクトル、垂直なベクトル、など平面ベクトルの最初に出てくる話題はとくに問題なく進んでいきます。

最初のポイントは例題22の、点Pの場所がどこかという問題です。

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この問題は、「点Pを表すために始点をどこにするか?」ということを考えますが、始点のルールは「三角形ABCならA、三角形OABならO」とまずは教えます。例題22の場合は、三角形ABCなので始点をAとして、その後は「平面ベクトルは基準が2つ」というルールを強調し、点PをABベクトル、ACベクトルの2つのベクトルで表現することを考えます。

(2)の面積比の問題は、いわゆる「自称進学校」的な高校生の場合、高校受験時に詰め込み切っていない場合があるので、(2)が初見で解けない場合には底辺の比(高さの比)から面積比を求める練習問題を与える必要があります。

 

始点の例外として、「重心を扱う場合」があります。重心を扱う場合には「始点を三角形の外の任意の点Oにとったほうが式のバランスが良くなるから」という理由で、始点を三角形の外にとり、三角形の各点を位置ベクトルで扱うよう教えています。

「バランス重視」というのは教科書にはありませんが、案外大切なことだと思っています。

重心を扱う問題は、例題21や57にありますが、21に関してはすでに位置ベクトルが設定されています。

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例題57については、このような板書になります。

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3.ベクトルの教え方 - 三角形の面積の公式

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例題17は三角形の面積を求める公式を導出する問題ですが、この公式は使う場面が非常に多いので使いこなせるように強調します。また、使う場面が多いといいつつなかなか覚えづらい公式でもあるので、導出もできるのが大切だと思います。

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4.ベクトルの教え方 - 一次独立の性質

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例題24は「THE平面ベクトル」とも言うべき問題です。一次独立の性質を用いて「点Pを2通りで表して係数比較」することによって解ける問題ですが、一次独立が要は斜行平面上の点Pの表し方は一通りに決まってるじゃん、ということを分かっていなくても「2通りで表して係数比較」の部分だけで解けてしまう側面もあります。

正直、数学がよほど好きな生徒ではないかぎり、公式的に解法を覚えてしまってもいいのかなと思います。数学を意味で解くのが好きな生徒には、斜行平面についてもどんどん教えたらいいと思います。

個人的には、斜行平面の性質はものすごく面白いと思うので、この面白さを伝えたいと思うのですが、問題を解けるだけでせいいっぱいで、意味を味わう余裕がないというのもなんとなく想像できてしまいます。

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5.ベクトルの教え方 - ベクトル方程式

高校生は「ベクトル方程式」と聞くと無条件に「なんか難しそう」という感覚を持ってしまいがちですが、「ベクトル方程式?クソ簡単よ、見たとおり式たてるだけじゃん」と強調し続けるのがこの分野の教え方です。

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例題33がベクトル方程式の問題です。

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数IIの軌跡を教えた後にベクトルを教えるケースが多いと思いますので、「軌跡と一緒やで」という話をします。pの条件式の立式については「点Pに行くべき道順を教えてあげよ」と話します。再び33をみていただいて、(1)なら

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点Pは、「OからMまでいって、MからはACに平行に行きなさい」という条件になります。このとき、生徒を指名して答えさせると「OからMまでいって、MPに平行」というように道順のなかにPを混ぜてしまう場合があります。「ここから、花屋さんにいく道順を教えるときに、『花屋にいけ』じゃわからんでしょ。だから条件にPを混ぜちゃダメよ」と教えます。


6.ベクトルの教え方 - 空間ベクトル

平面ベクトルで基本の考えかたさえ理解できてしまえば、「平面ベクトルのこの問題が空間になっただけ」で説明がすんでしまう問題が多いので、なるべく平面ベクトルのうちにベクトルの十分な理解を促すことが大切だと思います。

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例題64は、空間ならではの問題のような雰囲気がしていますが、この問題でさえ最初の一行目は平面ベクトルの条件です。

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7.ベクトルでよくある生徒のミス

ベクトルと実数を区別できていない

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言葉足らず

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割り算の導入

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